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夜行性🌙サナトリウム

大阪在住のオジサンが戯言、譫言、寝言の数々を綴ります。

あなたは背中で語れる上司(先輩)ですか?

自論、持論

S車輌・Sリーダーの片腕・旅寅

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訪販シリーズ第1弾

anchan0412.hatenablog.com

 

訪販シリーズ第2弾

anchan0412.hatenablog.com

※当ブログからのニュースです!

全ての働く人へ贈る旅寅からの応援歌

work-mikke.jp

好評連載中!ぜひご一読を~。

 登場人物

T部長とは?

【丸〇真綿時代、主流だった【綿布団の下取り交換トーク】に代わる【対羽毛布団トーク】を編み出し、爆発的な売り上げをあげ、全国の支店や営業所にその名を轟かせた伝説の営業マン。彼の編み出したそのトークは以降、多くの布団屋のスタンダード・トークになった。「HUNTER×HUNTER」でいうところの【行った仕事がそのままマニュアルになった】という「ジン・フリークス」のような存在。

K係長とは?

入社直後から新人離れした営業成績を叩き出し(営業以外での大立ち回りもあったらしい)1年で係長まで昇った旅寅の高校の同級生。全営業から一目置かれる存在。

Sリーダーとは?

アポマンから車輌長に昇格したばかりで旅寅とペアを組んだ先輩リーダー。元、全国上位の常連だった天才系アポマン。K係長を誰よりも崇拝し、そして、恐れている。

 
旅寅のブレイク
苦しみ抜いた初オーダー以降、僕は無事に【ブレイク】を果たし、誘ってくれたKの顔を何とか潰さずに済んだ。
初オーダー翌月から3ヶ月連続して500万円(シングル布団フルセット9組分)という規定をクリアし、スルリとリーダーに昇進。
Kほど早くはなかったものの、入社1年後にはアポマンとして全国5支店150人の営業マンの中で1位を取ることもでき・・・(1位は1回だけだけど)
 
僕はいつしか大阪1課の主力営業として、過酷な懲役(布団屋生活)をエンジョイする余裕さえ持つようになっていた。
継続は力なりというが、どんな過酷な刑務所での服役も、慣れてしまえばどうということはない。
 
ただ、相変わらずT部長の恐ろしさには全く慣れなかったけど(笑)
 
初オーダー後すぐ、僕はSさんというリーダーが初めてペア車輌を持つに際し、その相棒にと指名された。
A課長の能力に懐疑的だったこともあり、A車輌から降りるのは個人的にはウキウキだったけど、ただ、当のSリーダーは当初、僕のことが嫌いだったそうだ。
 
「だってさ、旅寅ってK係長の親友やん?俺はあの人に敬語使う、その同級生である旅寅には上から話す、旅寅はK係長と仕事終わったらタメグチって・・・人間模様としてメチャメチャややこしいがな。それにまぁ、こんなヤクザな会社にわざわざコネで入るって・・・」
「えっ!?こっ・・・コネ!?そんな風に捉えられてたんですかっ!?」
「そらお前、泣く子も黙るK係長やで?あのT部長が「ワシの若い頃にソックリや」言うほどの逸材やで?入社して半年くらいであのT部長とつかみ合いのケンカするような恐ろしいお人やで?あの人があれだけ熱心に推薦したら、そらいきなり1課の配属にもなるわな。ちなみに俺もK係長も最初は2課からスタートしたからな」
 
これは後から知ったことだけど、本来だと、新人の多くは大抵、大阪2課に配属されるのが通例らしい。そしてそこで能力を示した人間だけが、ごく稀に、T部長直属の1課に引き抜かれるという。K係長もSリーダーも、2課からの異動組。そういう意味では確かに僕は、Sリーダーからすれば【縁故入社】ということになるのかもしれない。
 
「でもSリーダー、僕、別に望んでこんな地獄みたいなとこに来たわけやないんすよ?Kが来い来いって言うから・・・」
「いや、分かってる。あの人、言い出したら訊かんからな。あ、でも今はもうどんな奴か分かったから旅寅大好きやで?ただ、最初はな、やっぱ気に入らんやん?自分が心底尊敬する上司が「アイツは絶対やる奴や」とかしょっちゅう言うたらさ、ちょっと・・・ジェラシーっていうかさ」
 
アポマンからクローザーになったばかりのSリーダーと、初オーダーをあげたばかりの新人アポマンの僕。
当初この組み合わせが結果を出すと思った人間は、まず誰もいないと思う。
ところが・・・これがまた、2人は物凄くウマが合ったのである。
毎日早朝から深夜まで2人でいるのが苦にならないくらい、性格が合うというか、波長が合うというか・・・。
Sリーダーはバディを組んだ直後、僕に言ったものだ。
 
「旅寅、車輌のメンツっちゅうのはな、数字があがったら不動やけど、アカンかったらT部長にすぐ替えられるんや。お前がアポ取ってくれたら俺は死んでも決めたるから、このコンビで結果残して、ずっと2人で楽しく仕事しようや!」
 
その後、僕は1年以上、S車輌のアポマンとしてSリーダーと2人で関西中を巡り、アポを取りまくった。
アポマンとしても一流だったSリーダーは、僕のトークがズレてくるとすぐにロープレで厳しく修正してくれ、そういう意味では僕のトークは、T部長流でもK係長流でもなく、【Sリーダー流】と言えるかもしれない。
そして逆に、僕が色んなタイプのお客さんとの商談をSリーダーに託すことによって、Sリーダーもクローザーとして鍛えられたはずだ。
 
我がごとながらS車輌のリーダーコンビは、お互いがお互いを高め合い、補い合う名コンビだったと思う。
 
ところがそのうち、Sリーダーは自分の車輌のアポマンの不甲斐なさに嫌気を覚えた他の車輌長連中から、「旅寅を1日貸してくれ」と言われるようになった。
その依頼にちょっと食い気味に
「無理です、やってません」
と即答するSリーダー。ただ、K係長だけはSリーダーに有無を言わさなかった。
 
「おい、Sよ、今日寅借りるぞ、部長の許可はすでに取った」
「いや・・・係長、それは・・・」
「寅、Sと俺、どっちを取るんや!?」
「えっ!?」
「お前をここに導いたんは誰や!?高3の時大池会館で5000円誰かが貸してくれたおかげでスロット大勝ちしたよな!?その親切な男前は誰や!?」
「・・・いや、導いたというか強引に・・・。しかも借りたんは2000円・・・」
「寅、そんなこと言わんと頼むわ( ;∀;)俺部長にタンカきった手前、今月はマジコケられへんのや。なぁS、2~3日うちのかっちゃんと寅交換してくれ。ほんま頼むわ」
「・・・じゃ2日間だけ・・・」
「よっしゃ!!寅、そんな歯ぐきが必要以上にピンクな奴のそばからはよ離れて俺の胸に飛び込んで来い!なっはっは!!(^◇^)」
 
これは車輌を持つようになってから実感したことだけど、ほんと、アポを取ってくれるアポマンがいないと布団屋は仕事が成立しない。
【アポ7クロージング3】と当時はよく言われていたけど、考えてみればアポがなければ商談は必然的に【0】になるわけで・・・。
そういう意味では、布団屋の仕事においてはクローザーよりアポマンの方が遥かに面白いし、やりがいもあるかもしれない(死ぬほど過酷だけど)
 
S車輌時代の僕は、T部長が作ったトークをベースにしながらも、Sリーダー風の味付けをして、そして更に、それを自分のキャラに合わせて改良・改善を重ね、完全にアポを取るコツを掴んでいた。
多分、その頃がアポマンとして、営業として、1番油が乗り切っていた時期だと思う。
1課の他のアポマンが1日に1件取れるかどうかのアポを、毎日複数取るのである。
自分で言うのもなんだけど、車輌長からしたら便利な存在だ。
 
ただ、自分が仕事を覚えれば覚えるほど、当時車輌長を張っていたような連中の背中は、逆に遠ざかっていった気がする。
営業という仕事を理解すればするほど、凄さがリアルに理解できてくるのだ。
特にT部長、K係長、Sリーダーは、僕にとって本当に別格というか、怪物というか、天才というか・・・。
 
では、ここで1つ強烈なエピソードを。
 

T部長の遺伝子~Kの系譜・Sリーダー~

Sリーダーの気性は荒い。当時の歳は僕らと同期、20歳。

外見は優男のイケメンで、客の人妻どころか、途中に立ち寄るサービスエリアのレストランのパートの奥さんまで口説いてイテコマすようなモテ男である。

ただ、えてして人は見かけによらない。

彼は大阪2課時代に結構な武勇伝を持っており、とても平和な2課に収まりきる器ではないと判断したT部長が、1課に引き抜いたという。

ところが顔面凶器のT部長にさえ、本当に納得がいかない時にはキレるのがSリーダーである。T部長はそのうち、Sリーダーを敬遠するようになった。

おかげでS車輌に乗っていた僕は、必然的にT部長とあまり絡まなくなり、それはそれは平和な時期を過ごすことができたのである。

そんなブチギレ王子、Sリーダーが、唯一絶対服従を誓うのが、我が友、Kだった。

なんでも2課時代、号泣するほどキレられ、トラウマになったらしい(笑)

 

「旅寅、あの人は学生時代からあんなんか?」

「同級生との殴り合いは2回ありますね。1回目のケンカは大柄なOって奴にカウンター喰らって負けたんですが、翌日歩道橋を歩いて登校するOに背後からいきなり殴りかかりましてね。周囲の奴らが総がかりで止めたんですけど、羽交い絞めにされながらも「ここから落として殺したる~!」って絶叫してましたよね。2回目はSって奴と殴り合いになって、ハサミで顔面刺そうとしましてね。これまたクラスメイトが束になって取り押さえました。あと、あいりん地区でチンピラに飛び蹴り喰らわして、その後ヤクザ風の男ども7人くらいに追いかけられて泣きながら天王寺まで逃げたとか・・・ま、その手の話はKに関しては腐るほどありますが・・・」

「こ・・・こわ~(-"-)ここ来てからもな、僅か入社半年くらいで【あの】T部長に飛びかかったんやで?あのオッサンに飛びかかるて、ダンプカーと相撲するようなもんやで?俺その場にはおらんかってんけど、何でもその場の全員で羽交い絞めにして止めたらしいわ。部長もブチ切れて掛け布団の袋、布団ごと振り回してたらしいし・・・」

「え?でもSリーダーも部長にキレたってKが言うてましたけど??」

「俺はその場にあった机ひっくり返して帰っただけでさ、さすがにT部長に殴りかかる勇気はないわ」

(アンタも大して変わらんがな(笑))

「ところで旅寅、俺ら1課の車輌にはもう一通り乗ったやろ?ホレ、このサイドブレーキ見て、不思議に思ったことないか?」

「そうなんですよ!?何で1課の車輌は全車、サイドブレーキがこんな直角に近い角度で立ち上がってるんですか??」

「うん・・・それはな、T部長が売り上げあがらん日に、現場移動してその場に着くたびに「クソがぁぁぁぁぁ!!」言いながら思いっきり引くからや」

「・・・えぇっ!?"(-""-)"」

「ちなみに俺も、K係長も、A課長も、M係長も、みんな時々やってまうんや。俺らは何やかんや言うても、あのオッサンの遺伝子を引き継いでるんやな(笑)」

 

T部長の遺伝子を引き継ぐ、K係長の系譜、Sリーダー。

 

そのSリーダーが僕に【車輌長としての覚悟】をまざまざと見せつけてくれたのは、和歌山県の山奥の集落での、あるクロージングによってだった。

 

その日、夕刻までアポが取れなかった僕は、陽が傾きかけた頃になってようやくアポを取った。お客様は気の良い、イケメンに弱そうな50歳くらいの奥さんで、明らかにSリーダー向きに見える。

 

「Sリーダー、取れました。持ち込むんで10分後に来て下さい」

「よっしゃ!さすが旅寅や!絶対決めるぞ!!」

先に持ち込み、敷布団を広げ、そこに奥さんの足を乗せてもらいます。

「いやっ!?お兄さん、なんかジワッと温かくなってきたわ!?」

「遠赤外線が入ってますから!あ、奥さん、説明係が掛け布団持ってきました」

「あ、どうも奥さんこんにちわ~、説明係のSです~。どうですか?うちの遠赤外線入りの敷布団は??」

「いやぁ、エライ男前来たわ~(^◇^)」

「ありがとうございます~(^◇^)ちょっと歯ぐき出てますけど(笑)あ、旅寅さん、他の家配達しといて下さい。黒田さんと赤井さんのカバー付けもお願いします。伝票は下の方で~」

「はーい」

そうやって家を出た僕は、歩きながら今のSリーダーの隠語を反復する。

 

他の家配達⇒このアポが駄目だった時のために次のアポを追い掛けておいてくれ

黒田さんと赤井さん⇒家の雰囲気的にブラックではなさそうだけど、もしかしたらローンはすんなりとはいかないかもしれない

伝票は下の方⇒売れても単価は安いと思う、期待するな

 

その洞察は、ほぼ僕と同じだった。布団屋も慣れてくるとその辺は家や人の雰囲気ですぐ見抜けるようになる。

僕は指示通り、次のアポを取るべく、また次々とドアを叩き始めた。

 

1時間後、現在よりかなりサイズの大きい携帯が鳴る。

 

「あ、旅寅さーん、古布団大量に出ますから取りに来て下さい。あとダブシンシンフルセットとカバーと枕3つ、もう流れてますんで~」

 

ダブシンシン⇒ダブル1組とシングル2組

もう流れてる⇒値段も全部伝えてお客さん納得してる

 

(えぇっ!?えらい高額の契約になったなぁ!?)

 

これが本当に売れれば200万円近い額である。

車1台分の買い物だが、ま、とはいえ売れる時は普通に売れる。僕自身、それ以前に220万円現金その場で一括という契約も経験済みだったし、特に高額に驚いたりはしないが、ただ、これだけの値段をすんなり契約するというのが怪しい。恐らくSリーダーも、ダメ元で、フルスイングでクレジットの審査を通してみるつもりなんだろう。

 

アポ取りを中断し(ちょうど次のアポが取れたところだった)急いで古布団を取りにその家に向かう旅寅青年。まさにアポマンにとって1番気持ちが高揚する瞬間である。だがその時は、家まであと300mくらいの所に差し掛かった時、見てはならないものを見てしまった。

 

その家に入る、恐らくは工員だろう、作業着姿の男性。

 

(あ、終わったな)

 

商談の途中に旦那さんが帰宅しても契約に繫がるケースは、多分2割以下である。T部長でさえ半分は外してしまうだろう。とにかく、世の中のご主人方は自分の不在時に家に上がり込んで商いをする男を嫌う(僕だって嫌だ(笑))それもSリーダーのようなイケメンと奥さんが楽しそうに話していれば、なおさらである。

 

ところがその日は、ただ商談が終わるだけでは済まなかった。

 

家に近付くにつれ耳に届く、罵声と物音。

ご主人が・・・帰宅するやいなやブチ切れしたようだ。ただ、とはいえそれは時々はあることで、とりたてて特別なことではない。

(早く布団引き上げて次だ)

僕は、特にいつもと変わらぬ呑気な気分で商談の場に戻った。ところが・・・

 

現場は極めて荒れていた。

 

あろうことか、50歳くらいのソコソココワモテのご主人は、自分の留守中に布団屋を家に招き入れた奥さんの髪を掴み、その頬を何度も殴っていたのだ。しかもグーで、である。そこにブチ切れたSリーダーの怒鳴り声が響く。

 

「ご主人、奥さんは僕の話訊いてくれてただけで何も悪ぅないでしょうが!?なんで女性に手ェあげますのん!?アンタ、ほんまに「畜生」やね!?」

「何やと!?ワレェ!?刺し殺したろかぁ!?」

 

そう言うなり目の前の押し入れを開け、何かを取り出したご主人。見慣れないアレは・・・任侠映画でよく見るいわゆる「ドス」って奴のようだ。

そのヤッパをSリーダーに向け近付こうとするご主人を、後ろから羽交い絞めにして止める奥さんと、Sリーダーの両肩を掴み外へと連れ出そうとする僕。

 

四者四様、まさに地獄絵図である(汗)

 

ところがSリーダーは必死に静止する僕を吹き飛ばし、あろうことかご主人に近付き、自分の胸を指差しながら絶叫した。

 

「どないしたんじゃいオッサン!刺してみんかい!?心臓はここじゃ!!」

 

(ああ、この人は間違いなくKと同類だ)

 

そんなことを一瞬思ったものの、悠長に構えている暇はない。前に進もうともがくご主人を全身全霊で止める奥さんに倣い、吹き飛ばされ肘を怪我した僕も、再度気を取り直しSリーダーを羽交い絞め(笑)その時にはご近所さんも続々と様子を見に現れ、もはやその家は一般家庭とは言い難いものものしさとなっていた。

 

「Sさん、とりあえず一旦外出ましょう!」

「放せ旅寅ァ!!コラオッサンどないしたんじゃ!?かかって来いやぁ!?」

 

相手のご主人は猛り狂う若いSリーダーにたじろいだのか、ドスを捨て、また奥さんを殴り始めたのを近所の人に止められていた。

僕は力任せにSリーダーを外に連れ出しながら、「Sさん、落ち着いて下さい!次のアポ取れてますんでもうここは切り上げましょう!」と叫ぶ。

荒い息を押さえこんだSリーダーはようやく静止し、冷静になった。

 

「スマンな旅寅・・・。ゴメン・・・邪魔入ったわ・・」

「いや・・・見たら分かります(笑)布団引き上げてくるんで車戻ってて下さい。絶対もう家に入って来たらダメですよ??」

 

結局、僕は家の中に戻り、ご主人と奥さんに「ご迷惑おかけしました、引き上げますんで」と深々と謝罪した。ご主人は「フンッ!」って感じで2階に消える。痛々しくも、奥さんの頬は青く腫れていた。

 

「奥さんスイマセン・・・僕が布団見てとか言うたばっかりに・・・」

「いいえ!!こちらこそスイマセン・・・。今日ね、主人遅い言うてたんですけど・・・」

「お顔、大丈夫ですか??」

「大丈夫です。いや、前にね、内緒で物買ったんがバレてね、(次ないぞ)って言われてたから・・・。あのお兄ちゃんにも謝ってて下さいね」

 

コソコソ声ながらも結構明るく話す奥さんに胸を撫でおろしながらも、僕はこの仕事の罪深さを改めて実感した。

その後、近所の通報で駆け付けたパトカーが到着し、Sリーダーがお巡りさんに事情を説明。訪販証を提示して、僕らがその家を離れたのは、それから20分ほどが経過してからだった。次のアポはその家から1Kmほど離れたところで、余裕を見て夕飯後にアポを設定しておいたので(若いシングルマザーだった)2人は自販機でコーヒーを買い、ようやく一息つくことになった。

 

「Sリーダー、ありがとうございました」

「スマンな、怪我大丈夫か??」

「ああ、大丈夫、止めるのはKで慣れてますから(笑)にしてもリーダー、あそこまで頑張ってくれんでも・・・。命に関わりまっせ?」」

「旅寅がこんな夕方まで1日中歩き回ってようやく取ってくれたアポ、簡単に潰されて悔しいてな。すんなり諦めて帰んの・・・嫌やったんや。上司として相棒として、一矢報いな気が済まんかったわ」

 

その言葉を訊いた瞬間、僕はSリーダーがバディを組んだ直後に言ったあのセリフを思い出したのである。

 

【お前がアポ取ってくれたら俺は死んでも決めたるから】

 

(なるほど・・・その覚悟を今日態度で、背中で語ってくれたわけやな)

 

・・・結局、次の家で1組、布団は和やか~に売れ、Sリーダーはそのシングルマザーと電話番号の交換までして(笑)僕らはご機嫌で帰路についた。

 

後日、飲みの席でKにその揉め事の話をしたところ、奴はこう言った。

「しかしSもまだまだ甘いな。そういう時は向こうに手ェ出さして、その弱みに付け込んで布団売らんとな?」

 はぁ・・・ホンマ、ゲンナリするわコイツには(笑)

 「ま、冗談はさておき、寅よ、その状況ですんなり引き下がるような奴は1課の車輌長にはおらんよ。車輌を張るっていうのは、要は部下のアポを決めるために絶対引き下がらんってことや。T部長なんか俺が1課配属されてT車輌のアポマンやってた時、何回俺のアポに体張ってくれたか分からんもんな。しかもSは寅のこと大好きやからな。Sの気持ち汲んで、これからも支えたってやれな」

 

 

ジーンと来た。

 

 

・・・さて、あなたは誰かにとって、背中で語れる上司(先輩)ですか?

 

※当ブログからのニュースです!

全ての働く人へ贈る旅寅からの応援歌

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