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夜行性🌙サナトリウム

大阪在住のオジサンが戯言、譫言、寝言の数々を綴ります。

イチローが敬愛する人の柔軟な脳ミソ~訪販業界のジン・フリークスに学んだ日々~

「柔らかい頭を持つ」

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日本人がよく「尊敬の対象」とするイチロー。さすがにイチローは子供や若者、老人までも知っていますよね。でももう、鈴木一郎を「イチロー」として選手登録した人のことを知らない人は、結構多いと思います。

 

故、仰木彬監督。

 

類稀なる人間力と男気、監督としての能力、器量で、数多の著名選手(清原、田口、金村等)に敬愛された男。

ニュースステーション(当時の人気ニュース番組)出演時、小宮悦子(当時の人気女子アナ)をナンパしたことでも有名なこの仰木監督の凄いところを、イチローは以前のインタビューにてこう言っております。

 

「あの年齢であの脳ミソの柔らかさをもった人はなかなかいない。経験があればあるほど凝り固まってしまう人がほとんどですけど、その反対。フワッとしているというか、力感がないというか。世の中に頑固ジジイはいっぱいいるけど、そういう人たちとは比較対照にすらならない」

 

今日の記事は先日の訪販記事の続編です。

 

anchan0412.hatenablog.com

 

テーマはズバリ「柔軟性」。

※当ブログからのニュースです!

全ての働く人へ贈る旅寅からの応援歌

work-mikke.jp

好評連載中!ぜひご一読を~。

 柔軟性と素直さと

 

T部長とは(前編より抜粋)

【丸〇真綿時代、主流だった【綿布団の下取り交換トーク】に代わる【対羽毛布団トーク】を編み出し、爆発的な売り上げをあげ、全国の支店や営業所にその名を轟かせた伝説の営業マン。彼の編み出したそのトークは以降、多くの布団屋のスタンダード・トークになった。「HUNTER×HUNTER」でいうところの【行った仕事がそのままマニュアルになった】という「ジン・フリークス」のような存在。

K係長とは(前編より抜粋)

入社直後から新人離れした営業成績を叩き出し(営業以外での大立ち回りもあったらしい)1年で係長まで昇った旅寅の高校の同級生。全営業から一目置かれる存在。

 

クリエイト寝装での日々

Kは駆け出しの頃、某市の雇用促進住宅で、奥さんと必死に話している時に奥から「帰れ!」と言ってきたご主人にこうタンカを切ったことがあるそうです。

 

【布団屋が布団売りに来て何が悪いんですか?】

 

その後、部屋に引きずり込まれた彼が室内で目にしたのは、日の丸等、そのお方が堅気ではないと思われる証の数々でありました。

1時間後、散々小突かれた挙句、半泣きで生還したKは部長に言ったそうです。

「部長・・・いつも教えてもらってるセリフを言ったら旦那〇〇でした。土下座して何とか解放されましたけど・・・」

「お前アホか、相手見て言わんと・・・」

ただその後、T部長は何気にのちの【K係長】を称賛したんだそうです。

「ま、でもお前はいずれトップになれる男や」

 

予言は僅か3ヶ月後には的中しました。我が友、Kは全国150人からいる当社営業マンの中で1位に昇り詰めたんだそうな。T部長に言わせると【伸びる新人】というのは大抵、あの有名な

 

【山本五十六リーダー論】

 

に適応できる人なんだそうです。

 

 「やってみて、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」

 

この誰もが知る名言を新人に当てはめれば、

 

「やってみて(それを見て真似る)

言って聞かせて(言われたことを聞く)

させてみて(言われたことをする)

褒めてやらねば(褒められたら喜ぶ)

人は動かじ」

 

「「自分はこうや」と凝り固まってる奴に何を教えても一緒や。頭の固い奴は伸びん」

 

 

 ・・・イチローの仰木監督評とリンクしませんか?

 

 

T部長のこの発言は「従順であることこそ良し」という風に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。K係長は従順とは程遠いとんでもない跳ねっ返り気質です(笑)無理矢理押さえつけたりすれば、確実に、強烈に噛みついてくる男・・・。

 

ただ、確かに彼は学生時代から

【自分が及ばない部分を持つ人・自分が知らないことを知る人に対しては素直に教えを乞う】

というタイプでした。【譲らずは譲らず、乞うは乞う】という男らしくて、でも柔軟なその姿勢は、多くの男達から愛され、尊敬されていたのです。かくいう僕もKに対してだけは心酔する部分がありました。同じ歳の男で唯一、尊敬している人間。

 

頭の固い奴は伸びん

 

多分どんな業界の、どんな仕事をする人にも当てはまると思います。いや、こういうブログを書いたりすることにさえ通ずるかもしれませんね。T部長はよく売れない新人にこうも言ってました。

 

「天才ならともかく、お前が我流なんてまだちーと早いな。そんなもんはお前が誰もが一目置く結果を出してからや。別にワシやなくてもええけど(ここが素敵)まずは(この人のやり方は自分に合うな)と感じる売れる先輩の真似をしなさい。それで売れるようになったら、おのずと改善とか改良とかするようになるわ。我流はそのあとやな」

 

確かに世の中には天才型っています。ただ(自分は天才だから)と自覚していて、しかも常に我流で結果を出す人って、なかなかいないと思うのです。我流がダメならどうすればいいか・・・答えは簡単、新人当初は先輩の、しかも尊敬できる先輩の真似をしてしまえばいい。職場においての仕事のスタイルやトーク、取り組む姿勢などは、ラッキーなことに盗んでも窃盗にはなりません。

 

それができる柔らかい頭さえあれば、それこそ人間はいつ何時どこに身を置いてもやり直せると、個人的には思います。

柔かい頭とは一体?

とはいえ「既成に囚われない」というのも「頭が柔らかい」ということですよね?一部の人間が既成に囚われなかった結果、その業界が劇的な進歩や躍進を遂げたというのはよくあることです。

 

T部長は、新人が最初から無手勝流で走り始めることを怒って禁じるようなことはありませんでした。ある一定期間は泳がせて下さる(1週間くらいですがね(笑))

 

しかもそれで結果を出してしまうごく一部の新人には、逆に教えを乞うのです。

 「どんなトーク使ってるんや?」

謙虚で貪欲なT部長。ド新人からでも自分の武器を吸収してゆきます(笑)

 

ただ不思議なことに、そういうセンス依存型の営業の数字って、長くは続かないのです。努力に裏打ちされず、経験も伴わないただの【才能】。

 

【才能を本当の実力に変える】のは、結局は【努力】と【経験】なんですね。

 

ダメになっても自分流を曲げない、最初から人の言うことを訊かず結果の出ない新人に対しては、部長は容赦なく厳しかったですね。

 

僕が、三重県の津市でT部長から胸ぐらをつかまれて怒られたのは、入社して2週間が経過した日のことでした。

 

旅寅青年は入社して2週間、取ったアポが契約に繋がりませんでした。大半の新人が1週間も真剣に回れば1件は契約に繫がるアポが取れるというのに、です。アポは数件取ってはいたんですが、商談(クロージング)を委ねていたA課長との相性も悪かったんでしょうね。僕を入社させた親友、K係長の顔は、もう丸つぶれでした。

 

早朝から起き出し、朝礼前にロープレ、行きの車でロープレ、現場では1日歩き通し、帰りの車中でロープレ、帰社後は怒られて帰宅は深夜・・・。

 

その日アポのなかったアポマンの帰りの車中は、それこそ地獄です。助手席からT部長の【超】機嫌の悪い眠そうな声が飛んできます。

 

「・・・おい、旅寅、お前何黙って車乗ってるんや?今日アポないんやろがい?ロープレ頼んで来いよ?あぁ?」

「は・・・ハイッ、スイマセン・・・」

「はい、どちらさーん?」

「あ、奥さん、また来てますクリエイトですけど【以降略】」

「はい、ダメ。そこでそんな返ししたら客引くやろが?最初からや。はい、どちらさーん?」

「あ、奥さん、また来てますクリエイトですけど【以降略】」

「はい、ダメ。お前なぁ・・・そんな弱いツブシで客が綿布団に見切りつけるんか?もう1回最初からや。はい、どちらさーん?」

「あ、奥さん、また来てますクリエイトですけど【以降略】」

「おいっ!!話訊いてんのか!?ツブシが弱いっちゅうてるやろがっ!?お前なぁ、Kに対して恥ずかないんか?アイツ昨夜「もうちょっと長い目で見たってくれ」ってワシに謝って来たぞ?ええ加減もっと気ィ入れてやれよ!?あぁ!」

 

大阪から日帰りで向かう現場は近畿二府四県から岡山、広島にまで及びます。交代でする運転や、1日歩き回ったことからくる体の疲労もさることながら、この帰社の車中の上司とするロープレ(特にT部長相手)が精神的に1番キツかった(汗)

 

早く契約作らなきゃ・・・というプレッシャーと、親友・Kに対する罪悪感、自身への怒り・苛立ち、周囲の冷ややかな視線に対する気恥ずかしさ・・・。

別に【自分を曲げない】というつもりもなかったのですが、色んな先輩が色んなことを教えて下さるのでパニックになっていた部分はありました。元々口は立つ方なんですが、そんな自信はもう数日で霧散。完全に全部見失って、ただただ逃げたい・辞めたいの毎日です。

 

(もうアカン。さすがにキツいわ・・・)

 

その日、「いい加減ダメな旅寅に売上をあげさせる」という空気から、T部長が車輌に乗り込んで来ておりました。そして夕刻、アポもなく手ぶらで戻った僕はいきなり胸ぐらをつかまれ、遂に恫喝されたわけです。

 

「オイッ、コラッ!?お前なぁ、やる気ないなら辞めてまえ!旅寅ァ、お前、どっか冷めとるやろ!?こんなことやってられへんって心のどっかで思っとるやろ!?ここにおる奴はな、みんなこれで飯食って家族養っとるんじゃ!覚悟ないなら迷惑やからはよ辞めろ!!続けるんやったらこのタイム、どうにかしてみぃ!!」

 

・・・いやぁ・・・効きました"(-""-)"

 

ぶっちゃけ、それは図星でした。

失恋の痛手を振り切ろうとヤケクソで飛び込んだ業界だったもののヤケクソになりきれず、Kへの申し訳なさを上回るような虚しさを抱え、僕は内心、このヤタゲタな仕事を(バカバカしい・・・)と冷ややかに、他人事のように眺めていたのです。手を抜いていたわけじゃなかったのですが、少なくとも「気」は入っていませんでした。その恫喝でそれに気付かされた僕は、

 

(次のタイム、死んでもアポ取ったる!!)

 

と燃えに燃えましてね。夕飯時であるにも関わらずただガムシャラに目の前の家のドアを叩き続け(見るだけなら)という新婚の若い奥さんを何とか捕まえたのです。思えば入社以来、あれが初めての「本当の必死」だったんでしょうね。もう半分「お願い口調」で取ったアポでした(笑)そりゃ、その状態で手ぶらで帰ったら何されるか分かりませんから、必死にもなります"(-""-)"

 

布団屋にとって【若い奥様】は基本、難しいお客様です。お金も年配の方に比べれば持っていない場合が多いし、何より【主人に訊いてみます】が確実に訪れますから。訪問販売は即断即決が基本。【自分で高額の布団を今この場で買う】ことができる決定権を持つのは、やはりおばさま達なのです。商談に入ろうとするA課長にT部長はブチ切れました。

 

「お前なァ、この2週間旅寅が必死に取ってきたアポ何件外したんじゃ!?決めきれんのかお前に!?若い奥さんやぞっ!?コイツがこのアポどんな気持ちで取ったか分かってるんか!?ワシが行くわい、引っ込んどけ!!」

 

課長は銅像のように固まってしまいました。正直、胸がスッとしましたね。

(お前、そのお客さんは決めれるやろ~!?)

って人も外されてましたから(笑)

 

結局、T部長は、まるで魔法のような商談技術でダブルの敷布団を1枚、売って下さいました。初めて見る彼のクロージングは・・・まさに悪漢・・・じゃなくて圧巻。押したり、引いたり、いなしたり、すかしたり、なだめたりしながら、あのヤ〇ザみたいな顔面で、常に奥さんを笑わせ続けたのです。後ろで聞いていて思わず吹き出したのは、

 

「奥さん、新婚ですよね!?新しいお布団で子作り、頑張って下さい!羽毛布団で子供を産もう布団・・・言いましてね!遠赤外線入ってますからご主人もやる気ビンビンです!」

 

そういえば、初オーダーに高揚しながら敷き布団にカバーをかける僕を、T部長はキャンセル止めにも有効利用してましたね。

 

「奥さん、この旅寅君にとって、これが初オーダーなんですよ」

「え!?そうなですか?」

「はい、だから奥さん、あとから「やっぱり返す」とか言わんといたってね。初オーダーが返品とかになったらこの子、今後、ずっと「初オーダーがクーリングオフになった男」として「呪われた社員扱い」になりますから」

「あっはっは(^◇^)返さないですよ、気に入ったし。私が私の貯金で買うんだから主人にも言いませんので。旅寅君、良かったね、このTさんが上司で。この人じゃなかったら買ってなかったわ~」

 

(すげーな・・・。この人は心底、すげー人だ・・・この人の教え通りに今後経験を積めば、俺はきっと1流の営業になれる・・・)

 

きっとA課長ならこの商談、余裕で外していたでしょう。【T部長はどんな難しいお客でも決める】という評判は嘘ではありませんでした。その変幻自在のクロージングを目の当たりにした僕は、Kが「怪物だ」とT部長を称する気持ちがようやく理解できました。帰りの車中、ロープレから解放され、1人初オーダーの余韻にひたる後部座席の旅寅青年に、助手席のT部長は言いました。

 

「旅寅、今日の最後のタイムの気持ちを忘れるな。もうお前は明日から大丈夫や」

 

予言者でもないのでしょうがその後、僕は本当に今までが嘘のように数字を作れるようになりました。そして苦しい時はいつも「初オーダーのアポを取った時の気持ちを思い出せ」と、あの胸ぐらをつかまれた日に帰るようになったのです。

 

あの初オーダーの日の、帰社後。

 

深夜になった僕の帰りを、1課の皆は待っていてくれました。

「良かったな!!旅寅!!よぉやった!!」

生みの苦しみを存分に味わった僕は、我が事のように喜んでくれ、褒めてくれた先輩達の拍手に、思わず泣きそうになってしまいましてね(汗)そこでハタと思ったのです。

 

やってみて、言ってきかせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ

 

(これってまんま、この大阪1課の課風やんか!?)

 

いいところに呼んでもらったな、と、その時初めて思いました。訪問販売の業界は確かに地獄のように過酷ではありますが、大企業に比べれば物凄く爽やかな部分が1つだけあります。それは「社内営業」や「社内政治」が殆ど通用しないこと。実力のないもの、結果を出せないものは生き残れないのです。縁故や色仕掛けによる出世もありません。能力や器量のある人間が上に立ち、柔軟で必死な人間だけが生き残る業界。

 

クリエイト寝装は間違いなく純然たるブラック企業でありました。早朝~深夜まで仕事だし、代休も残業代もないし、パワハラどころか暴力沙汰まであるし、訪問販売法をはみ出ることもあったし。

 

ただ、その後大企業系列企業で務めた僕からすれば、正直、よほど大企業の社風の方が大変でしたね。いくら諸々の体制が整っていても、実力無視の謎の人事や評価が横行する陰湿で軽薄な社風では、優秀な人材は育ちません。できる人間がロクでもない上司の下につけられ、虚しさと諦めの中で腐ってゆくのを見るのは、本当に忍びないものです。

 

そういう意味では、クリエイト寝装は天国でした。イチローや田口が仰木監督を敬愛していたオリックスは、当然の如く日本一になりましたが、凄い男が上に立つと、下の人間は絶対

(この人に認められたい・褒められたい・この人を男にしたい)

と思うものなのです。そして士気は上がり、結果が伴うようになる。

 

世の中には(この人、マジいらんわ・・・)というような仕事しかしないくせに高給を持って帰るおじさま・おばさま管理職達が、山ほどいます。彼らよりも遥かに今後、会社のためになる有望な若手を何人も見殺しにし、スケープゴードにし、その屍や白骨の上に、自分の利益や立ち位置を確保する連中。

 

イチローではありませんが、そんな連中とT部長は、比較対象にすらなりません。1人の人間が放つ強烈な熱は伝染し、必ず周りを感化します。そしてそういう一体感のある集団に身を置くということは、人間にとってとても幸せなことではないでしょうか?

 

以降、布団よりも商材が大きくなり、それよりも遥かに高額な契約を営業として締結したことが何度もありましたが、結局、僕はあの初オーダーに勝る喜びを得たことはありません。

 

そして何よりその後、僕は伸び悩む後輩や後続にはいつも同じことを言うようになりました。

 

「頭を柔らかくしましょう」

 

※ 布団屋編は次回完結です。

※当ブログからのニュースです!

全ての働く人へ贈る旅寅からの応援歌

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