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夜行性🌙サナトリウム

大阪在住のオジサンが戯言、譫言、寝言の数々を綴ります。

真夏の情事~若狭の砂浜で~

夏の危険な情事、いや、行事

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anchan0412.hatenablog.com

anchan0412.hatenablog.com

 

 ä¸Šè¨˜ï¼’話の続きです。

 

皆さんは海で『遠泳』を敢行したことがあるでしょうか?僕は、別にしたくてしたわけぢゃ全くないんですが、3回だけ、させられたことがあるんです。

 

それも学校行事で3日連続、です。

 

初日:1km(見極め)

ー泳げた者のみ以降へー

2日目:2km(リハ)

最終日:4km(本番)

 

え?正気の沙汰じゃない??

え?母校は戸塚ヨットスクールかって??

 

いえいえ、歴とした公立の工業高校ですよ。

しかもこの伝統のイベント、70年以上続いていたんです。

え?イベント名?聞きたいですか??

 

 

「見事完泳し、

その身に「今工魂」

を刻み込め!

今工生1年全員参加の

真夏の伝統行事、

「魂」の遠泳訓練!

(ドンドン♫)」

 

 

・・・実は僕、当校の先輩である叔父に、もう入学する前にこの過酷な訓練のことは聞かされていたんですよ。

 

「旅寅、あれはメチャメチャキツイぞ。運が悪けりゃクラゲに刺されるから、ムヒとかキンカン持っていけよ」

 

ムヒやキンカンがクラゲの刺し傷に効くかどうかはともかくとしても、過去溺死事故とかは起きてないのでしょうか?(汗)

 

心の準備ができていた僕と異なり、発表時、他の生徒はざわついています。あんな汚い桃ヶ池では泳げるKやH(※前項参照)も、珍しく弱音。

 

「4km!?サメとか大丈夫なんかっ!?」

 

普段はチャラい担任も、この話題になるとまるで鬼。軽口が叩ける雰囲気は皆無です。

 

「ええかお前ら!!よぉ聞けよっ!!これはな、気合い入れてやらんと命に関わる行事なんや!!こと遠泳訓練に関してはな、フザケて挑む奴には容赦せえへんからな!!創立直後から今に至るまで、お前らの先輩はみんなこれを乗り越えて、今工魂を身につけたんや!!別に絶対の強制参加ではないけどな、「面倒や」とか「他に予定あるから」とか、そんな理由でこの行事から逃げ出すような奴は、ワシは男として認めん!今から体慣らしとけ、ええな!!あ、それからな、「自分はかなづちや」っちゅう奴は無理したらアカンぞ?生半可やないからな?素直にワシとこに自己申告しに来てくれ」

 

・・・・・いや、脅しますね、先生(笑)

 

「海を4km泳ぐ」というのがどれだけ苦しいかはリアルには想像ができないですが、ま、ぶっちゃけ「やりたいか、やりたくないか」で言えば、そりゃみんなやりたくないですよね。

 

でも不思議なことに、誰も離脱者がでなかったりするんですね、これが。

 

こうして1学期の期末が終わると、1年生はほぼ全員、ドナドナの小牛のように若狭湾へ運ばれてゆきました。引率の先生や先輩は引き締まった顔をしていますが、いまいち事態が飲み込めていない僕らは、バスの中では旅行気分。

 

宿に着いてからも・・・。

 

あずき色のピッチピチのモッコリ海パン

と、

極太マジックで大きくクラスと苗字が書かれたピッチピチのゴムキャップ

を装着してからも・・・。

 

・・・まだいまいち過酷な訓練に参加している実感がわきません。

 

でも砂浜に整列するに至ってようやく、僕らは気付かされたのです。「うわっ、あそこ!可愛い子おるやんけ!?こんな格好じゃナンパもでけへんわ~」と緩んだ顔で発言したKの元に、風のように駆け寄る2人の体育教師。捕らえられた宇宙人のように両脇を抱えられたKは列から少し離されると、思いっきりのビンタを喰らいました。

 

「私語は慎め。訓練中は気ぃ緩めるな」

 

そのわめくでもない静かな怒り方に、一同は慄然。

 

(こ、これは・・・マジやな・・・)

 

見せしめにされてしまったKも、珍しく素直に謝ります。

 


こうしてようやく気を引き締めた僕らは、入念な肩慣らしをクラス毎でした後、訓練初日の「1km遠泳」に挑むことになりました。

ただ、肩慣らし中の打ち合わせで先生が話した内容を(ん?)と不審に感じたのは僕だけじゃなかったようです。


(今の内容やと泳いでる時間より・・・)

 

そして間髪入れずに全員に配布される、北海道名物、先生曰く「命のバター飴」。

 

「塩水飲んだら舐めろ!貴重やぞ!!帽子に入れとけ!ちなみに今日は1粒やけど本番では2粒やからな!安心してええぞ!」

 

・・・そんなたかだかバター飴にたいそうな(笑)でもまさかこのバター飴も70年続く伝統なんやろか??

 

 

苦しいのは「泳ぐこと」じゃなく

沖へ、沖へ、沖へ。

 

引率の漁船に囲まれた僕ら1年生の大集団は、平泳ぎにて沖を目指します。海ですから浮力はありますし、湾ですから波が荒いわけではなく、個人単体としては泳ぎにくくはなかったのですが・・・問題は「集団」であることです。

打ち合わせ時、先生はこう言いました。

 

「とにかく集団でまとまって泳ぐんや!前も後ろも隣も人間に埋め尽くされるんやから、1人が和を乱したら車と一緒で大渋滞や!周囲に合わせて、できるだけ一糸乱れずに泳ぐんや。ワシらが船から「エ~~~ンヤコ~~ラ!!」って掛け声かけたら、お前ら全員で腹の底からの大声で復唱しながら進め!ほんで常に、和や!和を考えろ!!立ち泳ぎで調整しながらの遠泳になるからな!!」

 

必死に前へ、前へと進みたい僕ら。でも誰もがギュウギュウ詰めの集団の中の一員です。とてもじゃないですが周囲と干渉して、まともな泳ぎなどできません。しかも、今泳ぐ場所の深度は恐らく10m以上。明後日には多分数十m以上です。

 

いきなりサメに襲われるんじゃないか?

とか。

クラゲにまとわりつかれるんじゃないか?

とか。

体は混雑で自由に動かせない上に、心は恐怖に支配されるわけです。

 ï¼ˆæ—©ãé€²ã‚“で早く終わらせたいっ(T_T))

軽くパニクる少年達に、漁船から無慈悲な一言が飛びます!

 

「はいっ!

とま~れ~!!」

 

いや、あの・・・

立ち泳ぎの・・・止まってる時間の方が、進む時間より遥かに長いのは気のせいでしょうか??思い切り体力を奪う立ち泳ぎでの停止状態から解き放たれるのをひたすら待つ僕らに、先生から更なる試練の号令がかかります!

 

※ボソボソ声の先生同士の会話

(整ったか?いや、後ろのあそこ・・・)

(・・・いや、大丈夫や、整った、行こう!ヨシッ!!)

「はいっ!!

エ~~~ンヤ

コ~~ラ!!」

 

【口を開くせいで大量の塩水を飲み、虫の息の1年生軍団】

エ・・・ンヤ・・・コ~・・・ラ・・

ゴボ・・・ガハ・・・

 

「声

小っちゃいぞっ!?

はいっ!!

エ~~~ンヤ

コ~~ラ!!」

 

【口を開くせいで大量の塩水を飲み、虫の息の1年生軍団】

エ・・・ンヤ・・・コ・・・

 

※ボソボソ声の先生同士の会話

(ちっ)→舌打ち

(あかんわ全然や(失笑)掛け声代わるわ)

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はいっ!!

じゃねーよ!!

ボート近いから

舌打ちとか失笑まで

全~部

聞こえとんねん!(-_-)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ!

とま~れ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぢ・・・・・・

 

地獄や!(-_-)

これはアカン奴や!!

 

 

 

 

 

 

塩水を大量に飲むせいで、喉がカラカラになった生け贄の子羊達は、皆ピッチピチのゴムキャップに忍ばせた『命の』バター飴を何とか舐めようと頭をまさぐります。しかし疲労からか、海へとそれを落とす奴が続出。

 

 

 

ああっ!!?( ;∀;)

 

 

 

まるで射精したかのような元持ち主の切ない叫び声を受けながら、海底へと一目散に沈むバター飴達。たぶん明後日の本番が終わった以降はここ近辺の魚は、素焼きにしてもバターの味がするでしょう。

 

僕の隣を泳ぐ、先ほど宇宙人のように抱えられたKは、キャップのおでこの部分をバター飴で「ポコッ」と膨らませ、まるで本物の宇宙人のようです。A型だからか、最後の方まで飴は舐めないつもりでしょうか?

 

「・・・おいっ・・・ソレ・・・舐めへんのか・・・?いらんなら俺にくれっ!」

 

と僕が冗談混じりに尋ねると、

 

「・・・おかんへの・・・若狭みやげや・・・」

 

と、まだまだ余裕十分のようです。

バター飴1粒をおみやげとしてもらった「あの」おかんの辟易した顔が一瞬浮かびましたが、その数分後には前言撤回、Kは飴にむしゃぶりついておりました。

 

そして不意に漁船から飛ぶ浮き輪。飛び込む先輩。

 

・・・足がつった脱落者の救出です。

 

さらには

 

「痛った~~~っ!!( ;∀;)」

 

と時折あがる声。

クラゲです。

引きあげられた船の上で悶絶してるあの彼は、ムヒかキンカン、持ってきてるでしょうか?なんならあとで貸してあげましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず僕の級友達は全員、3日間の超過酷な遠泳訓練を終えました。さすがに4kmは半端じゃありませんでしたが、1時間半~2時間かけて、見事完泳。最後の1人が浜に上がる時には、大声援と拍手喝采が自然発生しましたね。

 

こうして無事、僕らは「今工魂」とやらを手に入れたのです。コスパやメリットを重視する今の時代では考えられないような行事ですが、悪くはなかったですよ。個人的には素晴らしい経験をしたと感じています。ま、2度としないですがね(笑)

 

ちなみに余談ですが・・・僕らが卒業した翌年、遠泳訓練は「危険すぎる」ということで、廃止になったそうです。

 

・・・いや、それならもうちょい前に廃止にはなりませんでしたかね?(-_-;)

続く

 

※3回続いた当青春シリーズも次回のクライマックス「暴動編」で終わりです。★やブクマ、いつも本当にありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。皆様が、腹の底から笑える良き日曜日を過ごせますよーに♫

FROM 旅寅