夜行性🌙サナトリウム

大阪在住のオジサンが戯言、譫言、寝言の数々を綴ります。

優しいだけの男なんて誰も求めてねぇよ~Mr.Children桜井和寿の覚醒~

優しいだけの男なんて誰も求めてねぇよ 

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当ブログ著者紹介

旅寅

ライター

旅寅

元風俗店主という経歴を持つ大阪在住の43歳。はてなブログ「夜行性サナトリウム」にて発表した「元風俗店オーナーが書く」シリーズが、はてなブックマークの総合ランキングで1位を記録したことをきっかけに、本格的にライター活動を開始する。2016年、カクヨムにて発表した「造花~愛しき嬢との3年間~」がカクヨムエッセイコンテストの最終選考に残るなど、精力的に活動中。

※筆者コラム、連載中。

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☝今回はデリヘル嬢の稼ぎです。

ミスチルの助走

 「優しいだけの男なんて、

 誰も求めてねぇよ」

 音楽プロデューサーの小林武史氏が、デビュー間もない頃のMr.Children、桜井和寿氏に放った有名且つ痛烈なセリフだそうです。

 
別に小林氏に乗っかるわけではないですけど、僕にとっても出だしのミスチルは、そんなたいした存在ではなかったですね。
 
大阪のFM曲のヘビーローテーションだった『君がいた夏』も、OVA湘南爆走族のエンディングに起用されていた『虹の彼方に』も、確かに耳障りのいい曲でした。
アルバムまでは聴いたことがなかったけれど、名曲『抱きしめたい』はすでに認知していましたしね。
 
でも当時の桜井氏の創作する曲に奪われるのはあくまで『耳』だけで、『心』まで奪われたことは1度もありませんでした。例えるなら、
 
『美人なだけで心の琴線には触れない女』
 
………そんな感じかな?(笑)
 
そんなMr.Childrenが
『覚醒』
したと僕が感じたアルバムが『Atomic Heart』でした。
 
『CROSS ROAD』や『innocent world』が爆発的に売れ、彼らがブレイクしたから、というわけではありません。
僕が驚かされたのは、そのアルバムの実質的な1曲目、
『Dance Dance Dance』
の刺激的なメロディラインと、もっと刺激的な、物事の深層までえぐるような歌詞によって、であります。
 
 『TVに映るポーカーフェイス
 正義をまとって売名行為
 際どいコネクション 闇のルート
 揉み消された真相』
 
 (えっ⁉何この曲⁉す、すげぇ・・・)
 
 ミスチルって………
 
 (こんなに良かったっけ!?)
 
 桜井氏の覚醒に、冒頭の小林氏のセリフが影響したのは間違いないでしょうが、それにしてもその天才っぷりには心底驚きました。
(初めて尾崎を聴いた時と匹敵する衝撃でした)
ユーミンの『ルージュの伝言』を初めて聴いたフォーク世代のアーティストが、
 
『モノクロな楽曲ばかりのシーンで、彼女の曲だけがカラーだった』
 
と絶賛したというエピソードがありますが、まさに覚醒した桜井氏の才能は、それと同等か、もしくはそれ以上だと感じました。
 
 まず歌詞。
 
社会性や皮肉や憂いを帯びた、綺麗なだけじゃない言葉を並べられるアーティストは、数少ないです。
いや、綺麗な言葉にしてもそう。
彼の紡ぐ歌詞は、まさに彼にしか書けません。
生まれ持った感受性が全く違うのでしょう。
その類い稀な感性を『Atmic Heart』に至るまでの桜井氏はまだ歌詞としてうまく具現化できていなかったのかもしれません。
いや、確かに随所に光る歌詞はありました。
例えば、なかなか夢が叶わない歯痒さを前向きに歌った『星になれたら』の一節、
 
 『長く助走を取った方が
より遠くに飛べるって聞いた』
 
 これも素晴らしい歌詞ですよね。
でも楽曲の持つ物語が素直過ぎて、優等生すぎて、少年少女には刺されど、大人の魂までは揺さぶらなかったりします。
というより、素直でシンプルな人には刺されど、偏屈でひねくれた奴には刺さらない、というべきかな(笑)
とにかく僕にとって、それまでのミスチルの曲は、どれもこれもが『いい曲』ではあったけど、『凄い曲』ではありませんでした。
でも同じくPOPな曲調でも『Atmic Heart』の〆を飾る『over』は『星になれたら』とは全く異なる物語を持つ『凄い曲』だったのです。
 
 『『風邪がうつるといけないから、
キスはしないでおこう』って言ってた
考えてみるとあの頃から君の態度は違ってた』
 
 ………生々しいくらいリアルですね(汗)
冷めた彼女がキスを避けるためについた嘘に、彼は後々になって気付いたわけですな。
その上で、
 
 『心変わりを責めても君は戻らない』
 
 別れを乗り越えよう、悲しみを受け止めようとする彼。更には、
 
 『多分僕は忘れてしまうだろう その温もりを
愛しき人よ、サヨナラ‥』
 
 別れた女性をいつまでも引きずってストーカーになってしまうような女々しい男性には、彼の潔さや痩せ我慢を見習って欲しいですが、ま、それはさておき………
 
 明らかに、歌詞の質が変わっています。
小林氏の言った『優しいだけの男』は、このアルバム『Atmic Heart』には1人として出てきません。登場人物に皆、深みがあるのです。
 
 このアルバムで僕が1番好きな『クラスメイト』という曲。
タイトルからしたら(学園ラブストーリーか?)
と思いきや、どうしてどうして、全然違う(笑)
 
この曲は、ただのクラスメイトだった男女が社会に出て、再会して、恋に落ちたのはいいが、彼女にはすでに彼がいて、でもお互い好きで、もうどうにもならない……ってな残酷な物語であります。
 
 『3ヶ月前の再会から
思ってもないような急展開
今じゃもっと彼女に恋をして
もう振り出しに戻れるわけない
ただのクラスメイト、そう呼び合えた
あの頃は a long time ago...』
 
多分、彼女はそんなに性悪な子ではなくて、真面目な女性なんだと思う。
そりゃ形としては二股になってしまうのかもしれないけど、真面目な女性だからこそ、彼氏より遅れて現れた元クラスメイトとのことを『遊び』にもできず、それでいて彼氏も捨てられない………という状況?
 
いや、いや、いや!
 
歌詞の取りようによっては、やっぱり彼女は今の彼氏と別れる気は全くなくて、元クラスメイトとは刹那的に、したたかに恋をしているだけ‥‥?
 
………もうね、どちらとも取れます(笑)
 
 『明け方の歩道『じゃあね、またね』と彼女
走り出すタクシー マンションのベランダに
立って手を振る僕 たまらなく寂しい‥‥』
 
 情景が浮かぶ歌詞っていうのがあるとすれば、まさにコレです。
 
元クラスメイトの部屋を訪れていた彼女が、明け方の青白い街角でタクシーに乗り込み、それをベランダから見送る彼は、自分のものではない彼女に戻る彼女に、たまらない寂しさを感じている………
 
………同じ男として泣きそうになります。 
 
この2人が以降どうなるのか、曲中では語られません。
切なすぎる、後ろめたすぎるその恋のその瞬間を切り取ったのが『クラスメイト』という曲であり、解釈は人それぞれだと思います。
ちなみに僕はこの曲を聴くと、ある女性と、その彼女が1人暮らしをしていたマンションを思い出したりしましてね(笑)
お互い独身でフリーでしたから、この曲の2人とは設定は全く異なりますが、よく明け方、スクーターで帰る僕を、ベランダから見送ってくれた彼女のイメージが浮かぶのです。
 
情景を浮かばせる楽曲って‥‥たいがい名曲たりえませんか❔
 
とにかくもかくにも……『Atmic Heart』に収録されている楽曲の歌詞は、今挙げた曲以外も例外なく素晴らしいのです。
 
 そしてメロディは………それ以上かも?
 
 桜井氏の卓越したメロディメーカーとしてのセンスは、バンドスコアのコード進行を見れば、一目瞭然ですね。
僕は多少なりギターを弾き、オリジナル曲もバンドマン時代に何曲も創作したんですが‥‥世の中にはこうも凄い天才がいるものかと、当時、『Atmic Heart』の楽曲を弾いてみて落胆したものです。
アップテンポからバラードまで、楽曲の幅もひたすら広いし、マイナー調からメジャー調まで、曲調もまさに自由自在。
※ただ『Atmic Heart』には小林武史氏との共同作曲が4曲ありますから、彼の影響を受けながら才能が開花した可能性は高いですね。
 
 (凡百の表現者が到底到達できない高みにいる)
 
 まるで他の剣士が見上げる、宮本武蔵みたいな存在。
………つまるところ(先述しましたが)この『Atmic Heart』発売時すでに、桜井和寿氏はまぎれもない『天才』だったわけです。
 
 しかしながら、それはまだ『覚醒』であり『到達』では全くありませんでした。

『深海』『BOLERO』と更なる高みへ

 その後、Mr.Childrenの楽曲は(桜井和寿の才能は)まだまだ深みと鋭さを増してゆきます。続くアルバム『深海』も、その次のアルバム『BOLERO』も‥‥共に個人的には『Atmic Heart』を上回るアルバムだと感じました。
※その辺りは後日また書きます(笑)
 
(ミスチルの最高傑作は常に最新アルバムだ)
 
………というほど、全ての作品がシックリき続けてきたわけではありませんが、少なくとも僕にとってのミスチルの最高傑作は『Atmic Heart』ではありません。
ただ、
 
『Mr.Childrenのアルバム史上、1番華があるアルバムは?』
 
と問われたら、やはり『Atmic Heart』になるかもしれませんね。
(もしくは最新アルバムの『REFLECTION』かな?)
それは多分、皆さんも同じように感じているのか、このアルバムだけは、あまり中古で店頭に並んでいるのを、見たことがないのです。
(さすがに最近はネットで売ってますが)
確かにどうしても手放し難い華があるんだな、この『Atmic Heart』には。

『Atmic Heart』全曲review

 Printing 
プリンター音だけの序章です。
 
Dance Dance Dance
Mr.Childrenの覚醒を高らかに宣言するようなロックナンバー。シニカルで刹那的で鋭利な歌詞が印象的なギターリフに見事に絡み合い、何度でも聴きたくなる中毒性さえ帯びています。社会、自分自身を絡めながら、実は特定の女性へのラブソングにも聞こえる多面体な傑作。
 
ラヴコネクション
直訳は『恋の人脈』になるんでしょうか?まさにそのまんまのちょっとHな曲です。この曲も引き続き刺激的なロックナンバーであり、ミスチルの覚醒を印象付けます。女性を見下したように冷静に分析する女慣れした彼が、めくるめく恋とベッドに女性をひたすら誘おうとする歌詞ですが、明るいメロディと桜井氏の声の魔法か、不思議と陰湿さややらしさは全く感じません。Mr.Children、ライブの定番であり、隠れた名曲。
 
inosent world
アルバム発売前に先に『覚醒』を感じさせたシングル曲にして、アホみたいに売れたミスチルの看板ポップナンバーです。もはや語る必要さえない名曲ですね。アクエリアスかなんかのCMのタイアップ曲でした。
 
クラスメイト
詳しくは前述してますが僕がこのアルバムで1番好きな曲です。必聴!!
 
『inosent world』と双璧を成す大ヒットポップナンバー。Mr.Childrenを広く世に認知させたシングルですが、ただ個人的にはこの曲は『まだ脱皮の途中』という感じで、歌詞に残る青くささにニヤリとしてしまいます(笑)確か斉藤由紀と高島兄が出演していた『ホモセクシャル』を取り扱ったドラマの主題歌でしたね。
 
ジェラシー
異色、異質な、独特の世界観を持ったミディアムテンポのナンバー。打ち込み主体の電子的な音に、壮大で荘厳な感じだけど、その実は俗っぽい男の葛藤が歌詞として乗っているという、何とも不思議な手触りの曲です。何度も何度も聴いているとクセになって、最近はカラオケでついつい歌ってしまいます(笑)
 
Asia(エイジア)
桜井氏が作曲に関わらなかった唯一の曲。マイナー調からサビへ切り替わる部分の転調、歌詞的にいえば『清らな花のような君への憧れが胸を駆け巡る~🎵』……の爽快感がたまらないナンバーです。
 
Round About~孤独の肖像~
ちょっとフォークソングの香りが漂う古くて新しいアップテンポなナンバー。悲観的な歌詞とマイナーな曲調が終始貫かれたミスチルとしては珍しいタイプの曲です。
 
Rain
雨音だけの、次曲への繋ぎです。
 
雨のち晴れ
結婚適齢期を過ぎたサラリーマンの悲哀と日常を描いた傑作で、そのリアル過ぎる歌詞には、桜井氏の天才が遺憾なく発揮されています。
 
『1DK狛江のアパートには2羽のインコを飼う』
 
『親友との約束もキャンセルして部屋でナイターを観よう』
 
『最近はグラマーな子に滅法弱い、男ってそんなもんさ、新人のマリちゃんに言い寄っても、まるで手応えがない』
 
『『上司に愚痴言われるうちが華だ』っていうから、いっそ可憐に咲き誇ろうかと思うよ』
 
『たまに実家に帰れば真面目な顔して、できそこないの僕に母親は繰り返す、(生きてるうち孫を抱きたい)それも分かる気がする、なるべくいい子探したいって思っちゃいるけど‥‥』
 
最初に聴いた時はまだ10代だったので笑いましたね(笑)もっとも、20代後半にはあまりにもリアル過ぎて笑えなくなりましたが・・・。
この異様なまでの『等身大さ』は、恋する女心を歌った際のドリカム・吉田美和氏に匹敵するリアリティではないでしょうか?
 
まさにこれぞ『THE 独身のリーマン』です(笑)
 
Over
前述しましたがこの曲こそ『隠れた名曲中の名曲』で(まだ聴いたことがない)という方は是非一聴していただきたいですね。メロディはメジャー調で明るいのに失恋の曲だったりします。『恋の終わり』と『悲しみを越える』に掛けての『over』らしいのですが、
 
『男らしさって一体どんなことだろう?』
 
と曲中自問するあたりに、この『彼』の葛藤と苦しみが垣間見えます。
 
………まともな男なら誰もが通る道ですよね。
 
 
………さて、本日のblogは以上です。
 
皆さん、『Atmic Heart』、是非聴いてみて下さいね!!

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元風俗店主という経歴を持つ大阪在住の43歳。はてなブログ「夜行性サナトリウム」にて発表した「元風俗店オーナーが書く」シリーズが、はてなブックマークの総合ランキングで1位を記録したことをきっかけに、本格的にライター活動を開始する。2016年、カクヨムにて発表した「造花~愛しき嬢との3年間~」がカクヨムエッセイコンテストの最終選考に残るなど、精力的に活動中。

※筆者コラム、連載中。

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